2005年09月20日

『陋巷に在り』酒見賢一  4

71e02e69.jpg後宮小説』を高校生の時に読んだ衝撃は大きかったです。始めの一文で皇帝が腹上死するという………。中国っぽい架空の国をテーマに書いた想像力豊かな疑似歴史小説です。想像力豊かな構想も文体も歴史考証も非常に面白く、直ぐに酒見賢一は大好きな作家になりました。

………と言い乍ら、ほかには『ピュタゴラスの旅』と『墨攻』くらいしか読んでいない訳ですが、無駄に漢字の多くて廻り諄い文章を俺が書くのも、その影響を受けているからだろうと思われます(責任転嫁)。

因みに、酒見作品の中で先ず最初に読む可きは『後宮小説』だと思います。但し、アニメ版だと房中術の風味が省かれるからマイナス。



さて、本題。

陋巷に在り』は、11年を掛けて小説新潮に連載された、孔子と弟子の顔回の活躍する、呪術(この稿では礼とする)の飛び交う歴史小説です。

正直言いますと、中々書店で売っていないので、7巻を読んでから2年くらいずっと放置していました。8巻から13巻まで揃えたのが今年の8月。出張先に着くまでのバスの中やウンコの時間などを使って読破し終えたのが昨日です。ですから、俺側にかなり記憶が飛んでいる処があることを踏まえてのリヴューになりますので、ご了承下さい。ほんのちょっとネタバレもあることも、重ねてお赦し下さい。


★ この作家の最大の特徴である、空想を裏付けたり背景を語りたいが為に饒舌に挿入される蘊蓄が効果的で、文章を徒らに長くして物語の進行を中弛みさせてしまうマイナス面もありつつ、世界観を立体的にして深みを与えていると感じます。酒見賢一を好きになれるかどうかは、この蘊蓄が鬱陶しく感じるかどうかに係っていると思います)。



★ 諸星大二郎の『暗黒孔子伝』にインスパイアされたらしく、彼が表紙を手掛けていることもあるのですが、同じような匂い(異界に足を踏み入れそうで安易に近付いては行けないような魅力)を感じます。



★ 漫画にも通ずるようなキャラの立て方であり、顔回・孔子・[女予](ヨ)・子蓉・悪悦・少正卯・太長老・子服景伯・孟孫子・季孫子・公山不狃・公斂處父・五六・顔路・顔穆・祝融娘々・医[鳥兒](イゲイ)などなど、登場人物も非常に魅力的です。異能を駆使するという点で、テイストが全然違うけれど言うならば「春秋中国版ジョジョ」か?後書きでふざけ半分に連載誌上で「人気投票をやりたかった」と書いていましたが、やったら面白かっただろうな。きっと顔回・子蓉・[女予]・祝融・医[鳥兒]が上位に食い込む気がします。女性の描き方も素敵です。



★ 残念なのは、孔子が魯を出発するという中途半端な処で終わっていることです。これも諸星西遊記に似ています。女楽が出魯の原因というのも、やや弱く唐突な気がしました。作者の声を聴くと、13巻末の余章補記の通り、「魯を出る時点で、孔子と顔回が陋巷から居なくなってしまう為」と語っています。それとも本当に、後書きにあったように「新潮文庫の100冊」に選ばれなかったから、然程売れなかったから打ち切りになったのかな?

ともあれ続編を心より期待して居ります。
次は、最高傑作との呼び声も高い『泣き虫弱虫諸葛孔明』を読みたいものです(この本も千葉の本屋では見掛けたことが無いんだよな………)。


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