嫁相国より出陣の要請あり。 方天画戟(訳者註、現代のデツキブラシ)を得物に、玄関に繰り出(いだ)したるは飛将軍・空豆。敵将・砂塵や水泡に「ま、負けるもんか」と独りごちつつ、汚濁連合軍を薙ぎ倒す様相、無人の野を翔ける鬼神の如し。関内外の夥しい帰り水を浴び、戦鎧を濡らし乍らも豪胆に遂行す。 其の萬夫に當たる武勇を見、「馬中の赤兎、人中の空豆」と後人は讃へり。因みに赤兎とは、嘗て髭朱く、卯年生まれの空豆の父なり。